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散文詩「テレビの向こうで」

夢を見た。
太陽で煌めく大海原。
カモメが大空を泳ぐように飛ぶ。
港で海を眺める恋人たち。
遠くで波が立っている。
波は次第に大きくなって、港に近づく。
同時に、長い揺れが襲ってくる。
夢? それとも現実?
恐る恐る瞼を開く。
身体に伝わる目眩に似た揺れ。
何が何だか分からぬまま、目を見開いて、現実を見つめる。
一体どれだけ揺れたのだろう。


揺れが収まったところで、テレビを点ける。
テレビが告げる文字に、身が固まる。
宮城県栗原で震度7。
そして、大津波警報の発令。
何度も高台への避難を呼びかけるアナウンサー。
やがて映し出されたものは、港を、船を、車を、家を飲み込む巨大な波。
田畑を飲み込む波の流れ。
川を遡上する、海嘯とよばれる現象。
嗚呼! 夢の続きが現実になって、街を襲っていく。
ただ、ただ、自分では何も出来ない自然の怒りが街を襲ってくる。
一体何が起きたのか?
一体何が地の神を怒らせたのか?
一体何が海の神を怒らせたのか?
自然の怒りに、人の手で造られたものは、瞬く間に消えていく。
荒れ狂う波は、次々と街を飲み込んでしまう。


何も出来ないもどかしさに、16年前のことを思い出す。
一瞬のうちに街を襲い、6434名の命を奪った、阪神淡路震災。
あの時も、ただ呆然とテレビを見るだけだった。
地の神の怒りに、呆然とする人たち。
ただ、崩れ落ちた街を見つめる人たち。
燃えていく街を、見るだけしか出来なかった人たち。
あの時と、今起きていることに、何の差があるのだろうか?
いや、海の神の怒りがある分、今の方が想像を超え、深刻であろう。


テレビでは刻々と街の様子を映し出す。
命からがらに逃げ出した人たちを映す一方で、波に呑まれていく車などを映し出す。
ごっそり建物が消えた町がある。
町長以下、職員との連絡が途絶えた町がある。
大津波のみならず、大火災で焼け野原になっていく町がある。
しかし、東京という街にいる以上、何も手を差し伸べる事が出来ない。
ただ、現状を見つめることしか出来ない。
着の身着のまま、逃げることが出来た人たちにも辛い一日。
愛する人、愛する家族、大切な人たちを一瞬にして失った人たちには、自分の命が助かっても、悔しさと苦しさが心を蝕む。
どこかで生きて欲しい。
その願いは届くのか?


地の神の怒りは、東京の街でも混乱を起こした。
地震による線路の安全確認のための、電車の運転見合わせ。
帰宅時間と重なり、途方に暮れる帰宅する人々。
運転再開を待つも、いつまで点検が掛かるのか分からない。
そして、JRは本日の運転の取りやめを告げる。
鉄路を絶たれた人々は、我が信じる道を歩き出す。
1人が歩けば、10人が歩き、10人が歩けば、100人が歩く。
幹線道路は歩く人と、帰宅の途につく車で大渋滞。
当日中の帰宅を諦めて、帰宅支援ステーションに身を寄せる人たち。
首都圏の鉄路が絶たれた時、人は無力であることを思い知る。
だが、気付いた時には既に遅し。
ただひたすら歩いて、家路に向かう。


地の神と海の神の怒りで破壊したモノの代償は大きい。
水がない。
食料がない。
毛布がない。
燃料がない。
医薬品がない。
オムツがない。
ミルクがない。
そして、一番欲しい情報がない。
今、どうなっているのか分かる、客観的な情報がない。
どこに行けば、水は手にはいるのか?
どこに行けば、食料は手にはいるのか?
どこに行けば、毛布は手にはいるのか?
どこに行けば、燃料は手にはいるのか?
薬は? オムツは? ミルクは?
どこに行けば、何が手にはいるのか?
教えてあげたい。
いや、水を、食料を、毛布を、燃料を届けたい。
しかし、個人に出来ることは微力でしかならない。
どうして、人間って、自然の前では無力なんだろう。


時間が経つにつれて、被害は鮮明になる。
自然の牙が噛んだものは、あまりにも大きすぎる。
そして、追い打ちを掛けるように、福島第一原発の緊急停止。
東京の電気を賄う原発の停止は、すぐに東京の街にも影響をもたらす。
地震の恐怖に加えて、いつ電気が使えなくなる恐怖から、買い占めに走る人たち。
スーパーやコンビニの棚から、水、パン、カップ麺、レトルト食品、トイレットペーパー、等、瞬く間に消えた。
阪神淡路大震災の教訓はどこに消えたのか?
日頃から用意していれば、買う必要のないものばかり。
どうして、人はがめつくなってしまったのだろう。
どうして、人は他の人と同じでないと済まないのだろう。
困るのは、正直者の優しい人たち。
買い占めは食品や日用品だけではない。
仕事で車を使う人には、ガソリンが無いのは死活問題。
車でないと通勤出来ない人にとっても、ガソリンがないのは死活問題。
軽油もなくなれば、バスにも乗れなくなる。少し控えるだけで、助かる人は大勢になるのに、なぜ?


日を増すごとに、避難所から悲痛の声が聞こえてくる。
水が来ない。
食料が来ない。
燃料が来ない。
薬が無くなった。
水はどこにあるの?
食料はどこにあるの?
燃料はどこにあるの?
薬は? オムツは? ミルクは?
そして、情報はどこに行けばあるの?


離ればなれになった、大切な人を探しに、波の引いた街と呼ばれしところに行く。
そこには、瓦礫の山しか残っていない。
ところによっては、瓦礫すらない更地。
あの人はどこに行ったの?
私はここに居るのに。
呆然と見つめて、やがて、歩き出す。
他の避難所にいるのではないか?
ここの避難所にいてくれたら……。
避難者名簿を見て、安堵のあまり涙ぐむ人。肩を落としてため息つく人。
大切な人捜しはいつまで続くのか?
再び歩いて、次の避難所に向かう。


福島第一原発から半径20キロ以内に住む人たちに避難指示がでる。
半径30キロ以内は屋内待避。
それが、新たな悲劇を生もうとは、知るべしもない。
市内全域避難指示、あるいは、屋内待機になった市の市長から、悲痛な懇願が聞こえてくる。
救援物資を運ぶトラックの運転手が、市内に入るのを拒否して、物資が届かない。
どうか、水を、食料を、燃料を。
エリア内には、自力では避難できない入院患者がいる。
せめて、病人と高齢者を市外に避難させて欲しい。
市長の懇願は、あまりにも辛くて、心にナイフが突き刺さる思いになる。


大震災が起きてから一番の寒波が、街を襲う。燃料は底を突き、自家発電も限界。
避難所内のストーブも点けることが出来ない。辛うじて、救援物資で届いた毛布を重ねることで、寒さを凌ぐ。
とはいえ、東北の寒さは身を斬る。
乏しい食料事情に、厳しい寒さ。
やがて、身体が弱り、息を引き取る被災者。
せっかく助かった命も、劣悪な環境で、天に召される。
ニュースは原発のことが中心で、次第に避難所のことは報道されなくなる。
被災者にとって、何が必要なのか。
被災していない人たちに伝える手段が減っていく。
関東の茨城、千葉での被災のことは、報じられない。
関東の話題となれば、原発と計画停電のことばかり。
やがて、テレビの放映が通常番組になれば、人々の心から、震災という言葉は消えていくだろう。
阪神淡路大震災を忘れた人たちのように。


我々は決して忘れてはならない。
地の神、海の神の怒りを。
大地震が襲った街を。
大津波が襲った街を。
大火災を襲った街を。
大震災で亡くなった人たちを。
避難所で暮らす被災者たちを。
行方の分からない人たちを。
風評被害で苦しむ人たちを。
その一方で、率先して、災害復旧に携わった人たちを。
避難所でボランティアに勤しむ人たちを。
電気が通った喜びを。
水が出た喜びを。
ガスが使えるようになった喜びを。
そして、今、生きている、ということを。

| 暮らしの詩 | 01:49 | comments(0) | - |

桜の季節に

何年もの間通り過ぎる列車を見守ってきたのでしょう

今日来た時のあなたの姿は冬支度をしていました

幾度もの季節を巡り駅のシンボルとなったあなた

次の桜の季節にはあなたの運命は変わるでしょう

一度桜の季節に会いたかったね

列車が運ぶ風に舞い散る桜の花びらは

あなたを知る人の思い出になるでしょう

願わくばいつまでも列車を見守る主でありますように

いつか桜の季節にあなたに会えますように

              名鉄河和線椋岡駅にて
| 鉄道の詩 | 23:28 | comments(0) | - |

人が死ぬとき

人が死にたいとき

どんなに辛いことがあっても

神様がまだ必要としている時は生かさされる

たとえ、薬を何錠のんでも

人は死んではならないから生かさされる

でも時に神様は残酷な死を当たるときがあろう

それは決して残酷ではなく

人に生きることとは何かを問うためのもの

病に苦しんでいる人も

不慮の事故で死ぬことがあっても

喜びでなはいが学びの時である

だから、たとえ薬をたくさん飲んでも

私はこうして生かされている

何か人のために役に立つことが出来るでろために
| 心の置き場 | 13:11 | comments(0) | - |

雨模様

雨は悲しみの空模様

空の悲しみが地面を濡らす

拗ねた心の日には辺りを隠す霧雨が

怒りの中の悲しみは地面を叩き付ける

空の悲しみは人の悲しみで

空からの雨は人の心から溢れ出る

泥で汚れた靴を洗い流すように

空からの雨であなたの悲しみを洗い流そう

長く叩き付ける雨もいつかはやみ太陽が微笑むように

怒りは悲しみにそして慰めをもって喜びに変わる

雨は悲しみの空模様

いつかは晴れるあなたの心を待って

| 自然の詩 | 13:43 | comments(0) | - |

その過ちを

人は言われるまで気付かないその過ちを

自分は何か悪いことをしたのかと言うその言葉が

過ちの源であることに人は気付かない

過ちを犯さない人はいない

必要なのは過ちを犯さないことではなく

過ちを犯したことに気付き悔いるその心

どんなにきれい事を並べても

言葉の裏に隠された過ちの心に気が付かなければ

それは虚栄の中に咲く哀しみという名の花

誰かが鳴らす危惧の鐘の音に耳を傾けたとき

その過ちに気付くだろう

ただその過ちをただすことが出来るのは

紛れもなくその鐘の音を聞く自分だけ

聞け過ちという名の鐘の音を
| 心の置き場 | 22:02 | comments(0) | - |

朝の陽射しに

夜が明ける

朝の陽射しが差し込む車両基地で

朝の鼓動が動きだす

今日も万人の朝が動き出す

朝焼けの陽射しを受けた電車は

万人の思いを運ぶため

今日も走り出す

喜び 悲しみ 愛情

時には怒りの中の人を乗せ

それでも電車は走る

誰にも平等に照らす朝陽のように

優しく小守唄を歌いながら

リズミカルに走る

今日はどんな人のどんな思いを乗せるだろう

朝の陽射しの中に君は凛々しく走り出す

| 鉄道の詩 | 07:05 | comments(0) | - |

風よ−列車脱線事故に逝く人々に捧げる−

風よなぜ君は先を急ぐのか

尖った冷たい表情で凶暴になるのか

あの優しいそよ風の君はどこに行ったのか

人にも神にも誰にも幸せを奪うことは出来ない

草原の爽やかな風が幸せを運んだのに

なのに君はその風で人の幸せを奪うのか

君が連れて行くのは暗闇か

それとも極寒の寒空の下か

せめて君が手にした人の幸せを

神の待つ天空の国に運んでおくれ

誰もが待ち望む天空の国に逝ける魂を

***

2005年12月25日に山形県内で発生した列車脱線事故。
雪混じりの突風が4名の尊い命を奪いました。
この詩を亡くなった方々に捧げます。
| 心の置き場 | 01:17 | comments(0) | - |